良い機会なので読書しています。
大学で文体論の先生がおっしゃっていた「精読も大事だけれども多読も大事です」
大学では精読をみっちりやっていて、フランス語をノートに3行あけて書き写していました
フランス語
自分の和訳
先生の和訳・解説
フランス語
自分の和訳
先生の和訳・解説
…これを永遠と繰り返す。4年間永遠に…笑
フランス語漬けの毎日だったけれど、多読をしていなかったため、講読の授業で身につけた(ような気がする)読解力を実際に使っていなかったなぁと反省しております。
そして、今、えっちらおっちら読んでます。今までに2冊読みました。
1冊目は、
Une langue venue d'ailleurs
かの有名な水林章先生の自伝です。
仏文科の生徒にとっては雲の上の方で、ただひたすら尊敬の念しかありません。
1年生の時にお世話になった教科書『モンパルナス大通り106 bis』を作られた方でもあります。
(そういえば1年生の時にフランスに旅行して、お礼参りに、
母国語でないのに、フランス語をフランス人のように発音され話されるそのお姿を見て、学生ながらに自分はこういう風になれない、その力量が無いけれども、尊敬すると同時に自分に頑張らなければと思いました。
Une langue venue d'ailleursを読んでいたら 、その初心に一気に引き戻されました。
本でフランス語をma langue paternelleとおっしゃっていて(母国語 langue maternelleにかけて水林先生が使われている言葉)、果たしてこれだけ言いきれる外国人フランス語話者が他にいるのだろうか、と。ハーフの子供でも2つの言語を母語話者のように話すのは難しい。ましてや、大学合格を期にフランス語を始められたのに…NHKラジオのフランス語講座を聞いて発音を徹底的に真似ていらっしゃったそうです。やはり…英語をこの方法を徹底的に実践している人を知っているのですが、その人の英語は目をつぶったら完全にアメリカ人の綺麗な英語。やっぱり徹底的にやらないと外国語は修得できないのです。私もやらないといけない。フランスに住んで4,5年の無駄なプライドとか、仏文科卒の無駄なプライドとか、そういうの正直言ってあるけど、そんなのはおこがましいのも甚だしいのです。やろう、とことんフランス語にストイックになろうと思いました。よそ様の言葉を学ばせてもらうんだから、生半可じゃいけないのだな。
また、面白かったのは、水林先生が留学にフランスに初めて行かれた時、キャンパスで女学生に道を聞いて、よしスムーズに会話できたぞと思われていたら最後にうっかり「Merci, Monsieur.」と言ってしまったそうです。違う違う、Mademoiselleって言いたかったんですと弁解されたと書いてあって、その焦りに共感してしまいました。
あとは、素敵だなと思っていた女学生が履いていたbleu marineの服を褒めて、水林先生がおっしゃった言葉「日本ではbleu marineは高貴な色なんだよ。日本語てなんて言うか知ってる?(と、言いながら水林先生は自分に『次の言葉を言ってはダメだ!』と思っていたそうで)…Kon (紺。フランス語でバカの意味のconと同音)」で撃沈したお話など。一旦水林先生が書かれている本というのは忘れて、フランス語学習者なら共感しまくりのエピソードがあったりしてそれも面白いのです。
最後に水林先生が本著についてフランス語でお話されている動画を。
2冊目は、村上春樹のねじまき鳥クロニクル。
大学生の時にドイツの素敵な友人からオススメされて一度日本語で読みました。内容はあまり覚えていなかった。(記憶力の悪さにありがとう、新鮮な気分でフランス語で読めたよ 笑)
フランスで
今はちょっと時間ないけど、また後で時間を見つけて読もう
と買ったのが6年前。そういうフランス語の本が沢山あります。積ん読(つんどく)ってやつね。
…読み切りました。
あんなに複雑なプロットで3部作で長いのに読み切れたのは、やっぱり村上春樹の文体を知ってるから。最初の文体論の話に戻りますが、文体を知っていると読みやすい。
例えばフランス語の新聞が読みにくいと感じるのは、文体に慣れてないからなのです。(経験談)
村上春樹は、フツーの男がクラシック聞きながらパスタ茹でたりして、生活自体はなんてことないんだけど、そこから不思議なことが起きて、周りの人も不思議な人達で、最後は問題が解決されているわけでもないけど、でも自分は生きる方向性が分かって来たよ、的な… (村上春樹ファンの方申し訳ございません)
でもそういう勝手な村上春樹論は置いといて、やっぱりこの作品は面白い。
第3部が謎解き的な部分で、ずいぶんと物語が動いていくのですが、私は第1部も第2部も面白いと思います。本当は第3部は書かない予定だったらしい。それも分かる気がする。
結局誰もが自分の中に暴力的なもの、異質なものを抱えていて…でもそうじゃない人もいて、それが主人公なのかなと。世界の調和を乱す暴力的な綿谷昇とその犠牲者。それに対抗する主人公・岡田亨。2回目に読んでも面白い、きっと読み返す度に面白いんだと思います。
関係無いですが、岡田亨と久美子のネコが帰ってきて、新しい名前を岡田亨がつけてあげるんですが、フランス語だとBoniteなんです。ずっとカツオかぁ…ネコにカツオかぁ。と思いながら(もうこの時点で頭の中は「お魚くわえたどら猫追っかけて」です)読んでたんですけど、日本語だとサワラなんですよね。そりゃそうだよねぇ、久美子が「あなたが新しく名付けた名前良いわね」なんてカツオじゃ言わないよねぇ!6年前に日本語で読んだことなんてすっかり忘れて、この様です。
今度は日本語で読みたいです。そうしたら、きっと自分がフランス語で理解できなかった部分なども分かるし。
フランス語の勉強は一生続きます。